Sarashina3.2 translate公開 常体と敬体を指定できる翻訳
執筆・監修: 佐々木 航公開 更新 3 分で読めます
長い文書を段落ごとにAIで訳すと、ある段落は「だ・である」、次の段落は「です・ます」になることがあります。英語には文体の区別がなく、モデルが訳文の文体を決めるためです。SB Intuitionsが11月5日に公開した翻訳モデル「Sarashina3.2 translate」は、この文体を指定できるようにしました。
Sarashina3 translateの後継で、日英と英日の翻訳に特化しています。SarashinaサービスのTranslate APIで、styleにplain(常体)かpolite(敬体)を渡します。文体の指定はβ版の機能です。
指定しないと、7割が常体になる
SB Intuitionsは、国際的な翻訳の評価WMT24の英日データから698件を選び、文末を形態素解析で判定しました。
| 指定 | 常体の訳 | 敬体の訳 |
|---|---|---|
| 指定なし | 68.1% | 28.4% |
| 常体を指定 | 98.1% | 0% |
| 敬体を指定 | 1.0% | 97.1% |
残りは、常体と敬体が混ざった訳と、体言止めなどで判定できなかった訳です。敬体を指定して常体になった7件は、小説のセリフや「やったー!」のような短い一言が中心で、地の文の途中で文体が揺れた例はありませんでした。
敬体を選ぶと、質はわずかに落ちる
指定をしない場合の質は、前の版と同じ水準です。誤訳を減点するMQMは英日で2.19から2.18、日英で1.45から1.44でした。2つの訳を比べる判定では、英日で新しい版が有意に勝ち、日英は有意差なしです。一方、参照訳との一致を見るBLEUは日英で前の版が有意に上でした。
ただし、敬体を指定すると質は少し下がります。MQMは指定なしの1.52が1.88に悪化し、判定に文体の指定を伝えても差は残りました。この比較は判定に使うモデルが別なので、前の段落の値とは比べられません。SB Intuitionsはこの点を今後の課題とし、文体の指定をβ版にしています。
指示を含む文も、そのまま訳す
もう1つの改善は、訳したい文の中に「次の文を日本語に訳してください」のような指示が入っている場合です。前の版は英日の22.0%、日英の33.5%で指示の部分の訳が抜けました。専用の400件の試験で、新しい版の失敗は0件です。
ここからは編集部の見方です。文書全体の文体をそろえたい翻訳では、後から手で直す手間が減りそうです。顧客向けの案内を敬体で出すなら、質が少し落ちる点を踏まえ、重要な文書は人が読み直すのが安全でしょう。文体の指定は、同じ11月5日に重みが公開されたPLaMo 3 Translateにもあります。Sarashina3.2 translateはAPIでの提供で、日本語と英語の間に絞っている点が違います。1回に訳せるのは5,000文字までです。
Sarashina3.2 translateは、現時点ではYOBITSUGI AIからは使えません。
出典
- Sarashina3.2 translate: 常体・敬体を指定できる翻訳モデル(SB Intuitions TECH BLOG・2026年11月5日)
- モデル一覧(Sarashina Docs・2026年11月5日確認)