Phonon TTS、比較表でドイツ語とスペイン語の1位に 日本語は未対応
執筆・監修: 佐々木 航公開 更新 5 分で読めます
通信もサーバーも使わない読み上げモデルは、大きなモデルにどこまで迫れるのでしょうか。Gradiumの音声合成モデルPhononは、Hugging Faceの公開比較表Open TTS Leaderboardで、ドイツ語とスペイン語の聞き取りやすさが1位でした。重みのファイルは約65MBと75MBの2サイズです。GradiumとHugging Faceの開発者が11月5日に、公開から2週間の結果を報告しました。
モデルの種類とライセンス、Ollamaでの使い方は10月の記事にあります。Phononは日本語に対応していません。
聞き取りやすさは、英語だけ発表と違う
比較表は、生成した音声を音声認識で文字に戻し、元の文との単語の誤り率(WER)を測ります。値が小さいほど、正しく聞き取れる音声です。次の表は、11月5日に確認した最新版(11月3日更新)でのPhononの順位と誤り率です。右端は各言語の1位のモデルと、その誤り率です。
| 言語 | 順位 | 誤り率 | 1位のモデル |
|---|---|---|---|
| ドイツ語 | 1位20モデル中 | 1.17 | Phonon |
| スペイン語 | 1位21モデル中 | 0.88 | Phonon |
| フランス語 | 2位20モデル中 | 2.89 | OmniVoice2.67 |
| ポルトガル語 | 2位17モデル中 | 0.76 | Kokoro0.71 |
| 英語 | 4位37モデル中 | 0.73 | Ming-3.00.66 |
発表には「評価したすべての言語で3位以内」とあります。ただ英語は、10月30日の版の3位から、11月2日にMing-3.0が加わって4位に下がりました。ドイツ語の2位のs2-proは、比較表の表記でパラメーター数がPhononの約100倍あり、誤り率は1.23です。
この誤り率で分かるのは聞き取りやすさだけで、自然さや好みは測れません。Hugging Faceも、人による評価の代わりにはならないとしています。自然さの予測値UTMOSは英語だけが対象で、Phononは4.45、最も高いKokoroは4.51でした。
CPUでは、最初の音が最も早い
もう1つの表は、1件ずつ順に音声を出す場面の速さを測ります。CPUで測った11件のうち、Phononの2サイズが1位と2位でした。環境はHugging Face JobsのCPU(cpu-upgrade)、対象は英語の497件です。
| モデル | 最初の音中央値 | 遅いとき95%点 | 生成速度実時間比 |
|---|---|---|---|
| Phonon 31m | 19.5ms | 28.4ms | 16.3倍 |
| Phonon 40m | 26.4ms | 38.0ms | 14.4倍 |
| Pocket TTS | 125.9ms | 164.9ms | 3.2倍 |
| Kokoro | 852.2ms | 2,373.6ms | 5.5倍 |
「遅いとき」は、95%の音声がこの時間までに出始める値です。生成速度は、計算1秒で作れる音声の秒数です。この表のKokoroは順次出力のAPIが無い扱いなので、最初の音は遅く出ます。Phononの測定にはGradium自身の実行環境pttsを使いました。Gradiumは10月の発表でノートPCのCPUなら7ミリ秒としていましたが、比較表の環境では19.5ミリ秒でした。
なお、比較表の最初の画面ではPhononの生成速度が低く並びます。PhononはCPU、ほかは原則GPU(H200)で測った値なので、そのままでは比べられません。
日本語で使いたいとき
Gradiumは提携先と個別のPhononモデルを学習しており、日本語、韓国語、アラビア語も学習できるとしています。料金や時期は書かれておらず、個別の相談が前提です。
今すぐ日本語の読み上げを試すなら、同じ比較表に18件の順位があります。日本語は単語ではなく文字の誤り率(CER)で測ります。
| モデルパラメーター数 | 誤り率 | ライセンス |
|---|---|---|
| 1. OmniVoice8.1億 | 4.22 | CC BY-NC |
| 2. Supertonic 31億 | 4.46 | Open RAIL-M |
| 3. Magpie TTS3.1億 | 4.53 | 独自 |
| 4. Ming-3.014.8億 | 4.70 | MIT |
| 5. Kokoro8,000万 | 5.06 | Apache 2.0 |
ライセンスは比較表の表記で、使う前にモデルカードで確かめる必要があります。日本語の自然さはこの数字からは分かりません。比較表のListenタブなら、日本語を選んで出力を聞き比べられます。
そのほかの内容
- 公開から2週間のダウンロードは20万回を超えました。
- Hugging Face Transformersにはv5.21から入り、GPUでまとめて音声を作る用途に向きます。端末で1本ずつ動かす用途は、CPU、GPU、NPUなど10以上の環境に対応するpttsを使います。
- 内蔵の声は100種類以上です。Gradium Studioでは、本人の同意を得た短い録音から声を複製するか、文章で説明して新しい声を作れます。作った声はファイルで取り出し、端末の中で使います。
- 商用で自由に使えるのは英語のPhonon 31m(Apache 2.0)です。ほかはCC BY-NCで、商用の料金は生成量ではなく利用者数で決まります。
ここからは編集部の見方です。電波の届かない場所で英語やヨーロッパの言語を読み上げる機器やアプリなら、有力な候補になりそうです。日本語の製品には当面使えないので、上の表の上位をライセンスを確かめたうえで試し、実際に聞いて選ぶのが現実的でしょう。
Phononは、現時点ではYOBITSUGI AIからは使えません。
出典
- A Closer Look at Phonon TTS. Launching High-Quality On-Device Speech That Tops the Benchmarks.(Hugging Face Blog・2026年11月5日)
- Open TTS Leaderboard(Hugging Face・2026年11月5日確認)
- Open TTS Leaderboard: Scalable Evaluation for Multilingual Text-to-Speech and Voice Cloning(Hugging Face Blog・2026年9月30日)
- Open-Sourcing Phonon: A Suite of Frontier On-Device TTS Models(Gradium・2026年10月20日)