Sarvam AI、44ミリ秒で答える判断モデルPrismを重みごと公開
執筆・監修: 佐々木 航公開 更新 6 分で読めます
確率90%以上で選んだ答えのうち、外れたのは2.2%。モデル自身が見込んだ3.3%より少ない外れでした。インドのSarvam AIが11月3日に公開した判断モデル「Sarvam Prism」の、英語の公開ベンチマーク37本での結果です。
Prismは、自社の言語モデルSarvam 105Bをもとに作った判断モデルです。文章を書かずに、あらかじめ決めた選択肢ごとの確率を返します。重みはHugging FaceでApache 2.0ライセンスで公開し、Sarvam AIのAPIからも使えます。判断モデルの仕組みと、言語モデルと比べた費用は、判断モデルとは? 言語モデルと比べた得意な仕事と費用で説明しています。
平均の首位は「100ミリ秒より速いモデルの中で」
Sarvam AIは、Prismとほかの24の判断モデルを、3つの指標で自ら測りました。37本の公開ベンチマークからなるTypeSafeのJev Decision Index、Artificial AnalysisのDecision Indexを自社で作り直したもの、自社のインドの言語の試験です。Prismの平均は71.8で、応答の中央値は44ミリ秒でした。
| モデル応答の中央値 | 平均 | Jev | AA 再現 | インド の言語 |
|---|---|---|---|---|
| mammoth-1284ミリ秒 | 75.2 | 75.3 | 70.2 | 80.1 |
| GLiDE 1.2116ミリ秒 | 73.2 | 72.0 | 68.1 | 79.4 |
| Sarvam Prism44ミリ秒 | 71.8 | 67.0 | 65.9 | 82.5 |
| elephant-1145ミリ秒 | 71.3 | 72.2 | 67.6 | 74.0 |
| KnowLine-35B50ミリ秒 | 70.8 | 70.7 | 59.2 | 82.6 |
| Perplexity Decider v1.2117ミリ秒 | 68.0 | 67.7 | 61.2 | 75.0 |
| Jev 1.14196ミリ秒(公表値) | 64.5 | 60.7 | 61.9 | 70.8 |
Sarvam AIは、Prismを「100ミリ秒より速く答えるモデルの中で、平均が最も高い」としています。平均でPrismを上回るモデルもありますが、mammoth-1とGLiDE 1.2は、応答に2〜6倍の時間がかかります。
ただ、指標ごとに見ると順位は変わります。公開ベンチマークのJev Decision Indexでは、Prismは67.0です。mammoth-1の75.3やelephant-1の72.2より低く、Perplexity Decider v1.2の67.7にも届きません。平均を押し上げているのは、インドの言語で測った自社の試験で取った82.5です。この試験でも、KnowLine-35Bが82.6とわずかに上回りました。
応答の時間は、Sarvam AIがNVIDIA B200の1枚で、1件ずつ1,000回送って測った中央値です。APIでしか使えないJev 1.14は、公表された時間を載せました。Sarvam AIの環境からAPIで測ると、431ミリ秒でした。
確率は、どこまで当てになるか
判断モデルを業務で使うときは、確率が一定より高い答えだけを自動で通し、残りを人に回します。そのため、この使い方が成り立つのは、確率の値どおりに当たるときだけです。確率90%以上の答えで比べると、英語ではPrismとClefは見込みより外れが少なく、Perplexity Decider、Microsoft-Decision-1、Jev 1.14は見込みの1.5〜2.7倍外れました。インドの言語では、Prismの見込みが5.4%で外れは4.4%。ほかの4つのモデルは、見込みの2.7〜4.8倍外れました。
選択肢の並び順でも、答えは揺れます。Sarvam AIが2,000問の選択肢を4通りに並べ替えて試すと、答えが変わった問いはmammoth-1で8.8%、Perplexity Decider v1.2で10.3%、Jev 1.14で12.3%でした。Jev 1.14は、並べ替えずに同じ問いを4回送っただけでも、5.6%が変わりました。
Prismは、受け取った選択肢を名前の順に並べ直してから確率を出し、元の名前で返します。この処理を入れた状態では、答えが変わった問いは2,000問のうち0でした。送られた順のまま読むと、4.0%が変わります。
エージェントの実行の判定は、Claude Haiku 5.5より上
記録したエージェントの実行700件(1,770問)を判定させる試験も載っています。正解は、人の専門家の判定か、環境の自動の確認で付けたものです。全体の正解率はPrismが78.5%で、ClefとJev 1.14の76.4%、Claude Haiku 5.5の70.7%を上回りました。失敗の原因になったエージェントを当てる問いでは、Prismの69.6%と、Claude Haiku 5.5の37.0%で差が開きました。
Prismは1件の実行を、GPU 1枚でおよそ0.5秒で判定します。Sarvam AIの測定では、Claude Haiku 5.5はAPIで1件あたり中央値2.5秒、1,000件で0.64ドルでした。2026年7月以降に公開された脆弱性をもとにした自社の試験5,517問でも、Prismは89.0%で、Clefの84.5%を上回りました。フィッシングの見分けや、ジェイルブレイクの検出などを含む試験です。
自社で動かすなら、120GBのGPUが1枚
重みはFP8で約106GBあり、FP8に対応したGPUで約120GBの空きメモリが要ります。B200やH200なら1枚で動きます。Sarvam AI独自の形式で保存しているため、同梱のprism.pyで読み込みます。Transformersの汎用の読み込みや、一般の推論サーバーでは動きません。1問あたり131,072トークンまで読めます。Sarvam AIは、企業が自社のデータで追加学習し、自社の環境で動かせるように重みを公開したとしています。
GPUを用意しない場合は、Sarvam AIのAPIで使えます。料金は入力100万トークンあたり4インドルピーで、出力は0。どのプランでも同じです。APIで読めるのは1問あたり32,768トークンまでで、画像は受け付けません。
対応する言語は、英語、ヒンディー語などインドの10の言語、ヒングリッシュです。日本語は挙がっていません。APIの説明によると、確率が0.9を超える答えは英語で68.5%、インドの言語で38.4%で、インドの言語では人が確かめる件数が増えます。
ここからは編集部の見方です。日本語の問い合わせの振り分けに使ったときの当たり方は、発表からは分かりません。重みがApache 2.0なので、自社の日本語のデータで確率の当たり方を確認し、足りなければ追加学習する、という使い方の候補にはなりそうです。表の数字はすべてSarvam AIが自ら測ったもので、Artificial Analysisの指標も公式の値ではなく、自社で作り直したものです。ほかの判断モデルについては、Basetenのmammoth-1とelephant-1の記事と、Cloudflareの判断モデルの記事で紹介しました。
Sarvam Prismは、現時点ではYOBITSUGI AIからは使えません。
出典
- Introducing Sarvam Prism(Sarvam AI Blog・2026年11月3日)
- sarvamai/prism(Hugging Face)
- Sarvam Prism(System-1 Decision Model)(Sarvam AI Docs)
